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イルカのアイコン 高知県黒潮町 ~四国でクジラに出会える海~


全国で2番目にホエールウォッチングを始めた町

高知県黒潮町のクジラといえば・・・大方ホエールウォッチング!! カツオクジラをはじめ、ハセイルカやハナゴンドウなどのホエールウォッチングを楽しむことができます。 その歴史や現在進行中の最新のプロジェクトまでご紹介します!(2026年のシーズン:5月2日~10月31 日)

【全国で2番目にホエールウォッチングを始めた黒潮町。どのように開拓したのか、そのHistory】

大方ホエールウォッチングの始まりは、実は地元の海を知り尽くす漁師の知恵と挑戦から生まれたものでし た。

1980年代、漁師たちは漁獲量の減少という大きな課題に直面していました。魚が獲れなければ収入も減っ てしまうため、先の見えない厳しい状況が続いていたといいます。そんな中、漁師たちはアメリカ・カリフォ ルニアで「ホエールウォッチング」が行われていることを知ります。 一方、黒潮町の海には昔からクジラが訪れており、漁の合間に「ちょっとクジラを見に行こう」と船を出す こともあるほどクジラは日常の風景の一部でした。当時は観光としてお客さんを乗せることはなかったもの の、漁師たちはクジラのいる場所や習性をよく知っていました。

「この海の魅力をもっと多くの人に知ってもらえないだろうか。」

こうした背景から誕生したのが、大方ホエールウォッチングです。地域の自然を観光資源として生かす取り 組みは、漁師たちの挑戦から始まったのでした。


【野生動物と人、お互いにとって良いウォッチングを目指すとは?】

目指しているのは、人とクジラのどちらか一方を優先するのではなく、お互いにとって良い関係を築けるホ エールウォッチングです。

現実として、私たち人間が海へ出向き、クジラたちの生活圏にお邪魔しています。そのため、人間側が充分 な配慮を持って接することが何より大切。 例えば、船を急接近させたり、大きな音を立てたりせず、クジラたちが船を怖い存在だと感じないよう工夫 をしています。クジラの行動や様子をよく観察しながら、ストレスを与えない距離や時間を守ることも重要 なルールの一つです。

野生動物を観察することは、人間の都合を優先することではありません。クジラたちの暮らしを尊重しなが ら、その環境にそっとお邪魔させてもらうという意識を持つことが、人と野生動物の双方にとって良いホ エールウォッチングにつながります。


【毎年黒潮町で行われている個体識別調査について。なぜ調査をしようと思ったのか?】

大方ホエールウォッチングでは、船でクジラを観察する中で、クジラの背びれや体の傷など一頭一頭の特徴 を撮影・記録する「個体識別調査」を行なっています。 一眼レフカメラを使用し、クジラの背びれや体の傷など、一頭一頭の特徴を撮影・記録すること で個体識別を行っています。

この調査の目的は、広大な土佐湾の中でクジラたちがどこに分布しているのか、どの範囲を行動しているの かを明らかにすることです。

長年にわたる識別調査の結果、少しずつクジラたちの行動が明らかになってきています。その一つが、土佐 湾で確認された個体が鹿児島でも確認されているという事実です。同じ個体が両海域で識別されたことか ら、土佐湾と鹿児島を行き来している可能性が高いことが分かってきました。

このように、一枚一枚の写真を積み重ねる識別調査は、クジラたちの生態や回遊ルートを解き明かす重要な 手がかりとなっています。


【ニタリクジラだと思っていたクジラが、カツオクジラだった?】

当初、この海域で確認されていたクジラは「ニタリクジラ」だと考えられていました。

過去にクジラの表皮からDNA解析を行ったことがありましたが、その時点ではサンプル数が少なく、種を断定できるだけの充分なデータ がなかったため、結論は保留となっていました。

その後、メディアやホエールウォッチングのお客様から「ニタリクジラなの?それともカツオクジラな の?」と尋ねられる機会が増えていきます。しかし、確定した情報がない以上、はっきりとした答えを伝え ることができない日々が続いていました。

そこで国立科学博物館の先生方に協力を依頼し、勉強会を開催しました。改めて出た結論も、「やはりサン プル数が足りないため、現時点では断定できない」というものでした。先生方からは、新たなDNAサンプル としてクジラの表皮を採取してほしいという依頼を受けました。 しかし、広い海の中で、海の色に溶け込むような擬態色を持つクジラの表皮を採取することは、現実的に は非常に難しいです。その際に提案したのが、「クジラのうんこなら採取できます」という方法でした。先 生方も、排泄物から充分なDNAが得られるのか確信はなかったものの、「まずはサンプルを集めてみよ う」ということで了承をいただきました。

約2か月後、ついにクジラのうんこの採取に成功。採取したサンプルを先生方へ送りDNA解析を行った結 果、判明したのは「カツオクジラ」でした。ここまでの出来事は、およそ2~3年の間に積み重ねられたものです。


【うんこプロジェクトのこと】

【プロジェクトについて、どうしてこんな名前に?】

クジラを「見る」にとどまらず、クジラや海の環境を「知る」ホエールウォッチングを目指すのが、このプ ロジェクト。クジラのうんこには、未知なる情報がつまっているのです。

子どもから大人まで、ホエールウォッチングを楽しむ中でうんこを見つけたら協力してすくいあげます。ク ジラを調べることで、海の環境を考える人が増え、クジラの生息海域および環境が保全される状態を目指し ています。

本来であれば「クジラの検便調査」のような名称になる活動ですが、あえて「うんこ」というインパクトの ある言葉を使い、「クジラのうんこプロジェクト」と名付けられました。その理由は、調査研究という堅い イメージをなくし、一般の人にも気軽に参加してもらうためです。「調査研究」と聞くと、専門の研究者が 黙々と作業を進めるものという印象を持たれやすく、「自分には関係のない世界」と感じてしまう人も少な くありません。 一方で、「クジラのうんこプロジェクト」という親しみやすい名前にすることで、「面白そう」「参加して みたい」と興味を持つ人が増え、調査へのハードルを下げることにつながっています。 また、このユニークな名称は企業からも注目を集めやすく、活動に賛同する企業や寄付による支援も増える など、調査を継続するための大きな力となっています。


【プロジェクトを進める上で最も苦戦したことは?】

クジラがうんこをしている姿は以前から目にしていたものの、「実際に採取する」となると分からないこと ばかりでした。「クジラのうんこはどんな状態なのか」「何を使えば採取できるのか」「本当にすくえるの か」。そんな手探りの状態から、プロジェクトはスタートしました。

まず始めたのは、クジラがうんこをしたらとにかくすくってみるという作戦。最初に使用したのは、昆虫採 集で使う虫取り網でした。しかし、クジラのうんこは想像以上に水に溶けやすく、ほとんど採取することが できませんでした。次に、虫取り網のネット部分をストッキングに付け替えて挑戦。細かい目のおかげで前 回よりは採取できるようになったものの、毎回ストッキングを交換する必要があり、実用的とは言えません でした。そして3回目に、専用のプランクトンネットを導入。これが最も効率よく採取できる方法であるこ とが分かり、現在の採取方法につながっています。 意外にも、このプロジェクトで最も苦労したのは「道具選び」だったのです。

さらに、採取したサンプルはDNA解析に使用されるため、取り扱いにも細心の注意が必要でした。道具を 再利用する場合は漂白して徹底的に洗浄し、他の個体のDNAが混ざらないよう管理しなければなりませ ん。正確な研究を行うためには、採取の段階から厳密な管理が欠かせないのです。

また、国立科学博物館の研究者へサンプルを送ろうとしていたある日「採取後は冷凍して送ってほしい」と 依頼がありました。理由は、サンプル内に含まれるプランクトンの活動を止めるためです。 保存容器の中には、クジラのうんこと海水、そしてプランクトンが一緒に入ります。しかし、生きたプラン クトンはうんこを分解してしまうため、時間が経つとサンプルがほとんどなくなり、きれいな海水だけが 残ってしまうことがあったのかもしれません。

(FLIPPER 187号)


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