設立30周年メッセージ ”命のつながり”
キービジュアル制作者
繁田 穂波 (SHIGETA HONAMI) / 水棲生物作家
青森県弘前市生まれ
専門学校を卒業後、新人漫画家として週刊連載を開始。連載終了後は細密画の展示会を中心に画家として活動を始める。水棲生物をモチーフに水干( すいひ) 絵具を塗り重ね、絵の具の層を彫って描き「その生命から感じ取る息吹」を線にのせて表現している。
Twitter @shige_hnm / Instagram @shigeta_honami / Facebook @shigeta.honami
アイサーチ・ジャパン代表 相良 菜央 × 水棲生物作家 繁田 穂波
対談インタビュー
アイサーチ・ジャパン設立30 周年のキービジュアル『イノチノツナガリ』を水棲生物作家の繁田 穂波さんに描いていただきました。キービジュアルに込められた想いとは、どのようなものでしょうか?アイサーチ・ジャパン代表 相良 菜央が繁田 穂波さんにお話を聞きました。
≪ 目次 ≫
・ 通じ合う感性。イルカ・クジラと二人の出会い
・ キービジュアルに込められた想い
・ 生活の中で感じてほしい。入れるではなく包む風呂敷だからできること
・ 『いつまでもイルカ・クジラに出会える地球であるために』
アーティストとしてできること
(聞き手:大枝奈美/文・構成:石塚誉子)
通じ合う感性。イルカ・クジラと二人の出会い
はじめに、お二人のイルカ・クジラとの出会いや今の活動をするようになったきっかけを聞かせてもらえますか?
私、物心ついた時からイルカが大好きで、小さいころから、イルカたちのために何かしたいと思っていたんです。自分でゴミを拾ったり、学級新聞で温暖化とかイルカたちのこととか書いていろんな人に広めたりしてきました。大学1年生のときに、イルカのボランティアやりたいと思って検索したらアイサーチが出てきて、今までやってきたことってこれじゃんって。All as Oneというメッセージロゴに凄く惹かれたんです。All as Oneの『イルカもクジラも私たち人間も、ほかの生き物もすべてひとつのつながりの中で生きているんだよ』というメッセージが、私自身それまで心に抱いていたものと同じだったので、事務局に電話したのが始まりです。
私は、元々イルカ・クジラが特にというわけではなかったんです。海洋の生き物全体的に興味があって作品として描いていました。ある時ファンの方から、生き物自身のことをもっと詳しく調べて作品につなげたらいいんじゃないかとアドバイスいただいたことがって、なるほど!と思って、そこから、ただのモチーフとしてじゃなくて、なんとなく好きだったのをより明確に興味関心を持って、生態とか進化の経緯も含めて勉強するようになりました。その中で、同じ哺乳類なのに生活様式も違えば、人間特有のコミュニケーションの難しい部分とか細かいわだかまりとかなく、生きるということにシンプルに過ごしているイルカ・クジラが見えてきて、一種の救いみたいなものを感じたんです。忙しさとかでなんだかんだ生きることにいっぱい過ぎて、複雑化している気がするんですけど、作品にすることで、見ている方に「もっとシンプルに生きていいんだよ」とか、一緒にいる人のつながりを改めて考えられるきっかけになればと思って、イルカ・クジラを描き続けています。
生きるにシンプルってなんかわかります。ヒトって面倒くさいと思うことも多いですが、自分たちが一生懸命、毎日を過ごしているって感じることって大切ですよね。
ところで、穂波さんはアイサーチのことをもともと知っていらしたそうですが、どうやってお知りになったのですか?
ファンの方から聞いていたんです。「イルカ・クジラのことを勉強したり環境を守ったりしたいならアイサーチは外せない」って。フリッパーも読んだことがありますし、G-shock・Baby-Gも持っています。私、シャチがものすごく好きで、初めてのG-shockは絶対イルクジがいいと思っていたんです。2020がモノクロだったので、必死にゲットしました。一方的にアイサーチのことを知っているだけで、まさかそうゆうところからつながれると思っていなかったので、菜央さんと出会えたことにすごく奇跡を感じています。
そうなんですね。菜央さんと穂波さんとの出会いはどんな風だったのでしょう?
都内のとある場で名刺交換した人の紹介なんです。私の名刺にイルカが描かれているのを見て、その人に「イルカじゃん!僕の友だちにイルカちゃんって呼ばれている人がいるんですよ」って言われたんです。よくよく聞いたら、アイサーチ・ジャパンの代表をされている方という話で。アイサーチ知ってる!ってなって紹介してもらったんです(笑)
その時のことすごく覚えています!鴨川の海にいたときに、いきなり電話かかってきたんです。「今、菜央と同じようなこと言ってる人と名刺交換したんだけど、つながらない?」って。そのままビデオ通話したんですよ、海を背景に(笑)
そのとき話していたら『つながり』とか『循環』とか『イルカ・クジラも海の一部。私たち人間も一部』 という言葉が出てきて、穂波さんの話の端々から想いが伝わってきました。私も「あっ、この人、同じ感性をもっている!」と出会えたことが嬉しかったんです。
紹介してくれた人が「たぶん出ると思うからビデオ通話する?」って言うので、「はい!」って言っちゃったんです(笑)私、その時もイルクジモデルの時計をしてたので、ビデオ通話で菜央さんに時計を見せながら「めっちゃ好きなんで、ぜひつながってください!」って。ちょうど個展の前だったので、個展で会えればいいなと思っていたのに、その場でつながったもんだから、勢いもあって距離感がグッと近づいたんです。
それが2021年の1月ですもんね。まだ出会って1年くらいしか経ってないっていう(笑)
お二人は出会った瞬間から想いが通じ合ったんですね。
穂波さんの絵を見たとき、優しさが伝わってくる絵だと思ったんです。私も小さいころから、人も海も地球も丸ごと全部、優しさという温かさで包みたい、未来に向かってみんなで明るい未来に一歩ずつ歩んでいきたいと思っていました。穂波さんの絵からは、海のぬくもりや命の尊さ、温かさ、優しさ、心の慈しみがすごく伝わってくるんです。クジラの体の曲線だったり、色合いだったり。青も単一じゃなくていろんな色で、本物の海のよう。ぬくもりあふれたタッチで表現されていたので、アイサーチの30周年の絵を描いてもらいたいと思って声をかけました。
そう言っていただけて嬉しいです。自分が何かを発信するときはネガティブなメッセージではなく、ポジティブに伝えていくことを心がけています。「なんでこうなっているのかな」の疑問を持ってもらうためには、ポジティブな発信が大切だと思うんですよね。あれダメ、これダメだと人は喜ばないので、そうじゃなくて人が興味を持てるような発信をすることが、いちアーティストとしてできることかなと思っています。深刻な問題ではあるけれど、悪い方面に捉えられないようなものを作っていきたいなと。
キービジュアル『命のつながり』に込められた想い
キービジュアルに描かかれているメッセージの意図を教えていただけますか?
円を描くように生き物が循環していくイメージなんです。中心に向かっていくにつれて大きな生き物からだんだん小さい生き物へ行くんですけども、その中心にヒトがいます。進化していった時のつながりやコミュニティのつながりなど、ヒトというのはいろんな生き物に支えられて生きていると思うんです。
私、アイサーチのメッセージとは別に自分の中でつながりって3つあると思っているんです。1つ目が『人と人とのつながり』、3つ目が『人と自然のつながり』、そして『時のつながり』。この3つのつながりの中で、どの人もこの地球という星でみんなといっしょに生きているんだって思っているので、『命のつながり』の中にいろいろなつながりを入れてもらえてすごく嬉しいです。
よく見ると、イルカ・クジラのご先祖さまたちがいますね。
実は古生物を描くのは初めてなんですけど、パキケタスは絶対入れたいなと思って、あとはドルドン、バシロザウルスを入れました。現存していないので、学術的にどれが正しいのか難しいところではありますが、進化があったから今の生き物たちがいるということをしっかり伝えたかったんです。イルカ・クジラたちは同じ方向に向かって泳ぐように描いています。つながりの中で、目指すべき未来に向かって進んでいく様を表しました。
そして、30周年にちなんで30種類の生き物を描いています。小さい部分にプランクトンとか小さい生き物もいるんですよ。私たちが普段意識していないような小さな生き物もいますけど、その生き物がいなければ生きていけないと思うんです。なので、プランクトンやイカも入れて食物連鎖というつながりも入れました。
プランクトンも入れてほしいですってお願いしたんですよね。イルカ・クジラたちや他の生き物たちもそうですけど、支えてくれる命あってこその私たちというのをすごく大切にしたいなって思います。
生活の中で感じてほしい
入れるではなく包む風呂敷だからできること
今回、キービジュアルの制作と合わせて、メッセージを身近に感じ、生活の中でも意識してもらえるように風呂敷の制作を進めているそうですね。
キービジュアルといっしょに環境を意識できるものを作るという企画をいただいて、コンセプトと合うなと思って風呂敷を提案させてもらいました。風呂敷を使う時の結んだり解いたりする動作って、つながりを作るのに似ていると思うんです。何度でも縁をつなげていけるっていう。
ほんとですね!人が結ばれて、離れて違うところにも行くこともあるけど、どこかでまた出会ってって言うのもそうだし、人とイルカとか魚とか他の生き物同士も結び合わせながら、地球の未来を紡いでいるのがすごくいいなって思います。
それに、新しいことがなんでもできてしまう今だからこそ、昔の人たちが紡いできたことを尊重していきたいとも思うんです。風呂敷って、おばあちゃんが使っている古臭いイメージで思われがちだけど、そうゆうところにこそ人の生きる知恵がある気がするんです。人もその時の中で未来に向けて歩んでいるっていう、これも時のつながりですよね。風呂敷のようにこの地球も優しさで包んでいきたいですね。
※風呂敷はこの春オンラインショップFlipper’s STOREに登場予定!
ハンドウイルカ会員の方には夏号と共にミニ風呂敷を送付します。お楽しみに!!
『いつまでもイルカ・クジラに出会える地球であるために』
アーティストとしてできること
穂波さんの活動の中で、いつまでもイルカ・クジラと出会える地球であるためにしていることってありますか?
年1回なんですけど、都立の小学校でワークショップをやらせてもらっているんです。子どもたちにサメとイルカ・クジラとの違いを自分で描きこんでもらうんです。子どもたちにより深く興味関心をもってもらいたくて、絵を描くことって観察することが必要で、それってすべての事柄に通じていると思うんです。「ココとココに目があって、ココに口のスタートがあるから、ココでカクンって曲がって、ココまで行くと目があるね。で、カクンの延長線上に目があるね」と説明していくと、絵が苦手な子でもスーッとかっこいいのを作るんですよ。実は、授業の最後には必ず「みんな地球っていう家に住んでる家族なんだよ。だから、環境とか隣にいる人とかを大事に過ごしていこうね」というまとめをしているんです。
アイサーチといっしょですね!今はコロナ禍でストップしていますが、私たちも小学校での実施しているんです。学校という普段子どもたちが生活している場で伝えることは、子どもたちの心にとても響きやすいですよね。
そういえば、展示会に絵じゃない作品もありますよね。
はい、作品として海洋プラスチックへのアプローチもしています。不要になった漁具の浮きを回収して、ペイントしたものを展示しているんですけど、今後はワークショップもしたいと思っています。ビーチクリーンで拾った浮きに自分で描いて持って帰るとか、できるだけプラスの発信をしたいと思うんです。今回のキービジュアルでも、ヒトも入れてくださいというオファーがあって、ヒトとイルカ・クジラ、すべての生き物が関わっているというのが一番のポイントだと感じています。
今後、穂波さんがアイサーチとやりたいことはありますか?
アイサーチが普段やっているワークショップのような形でいっしょにやらせてもらえたらなというのと、ビーチクリーンアップを個人でしかやったことがないので参加できたらなと思っています。みなさんと海や生き物の話をしながら、ビーチクリーンアップできたらいいなと。
アイサーチのビーチクリーンはちょっと変わっていて、ゴミを拾うだけで終わらないんです。ゴミを拾うというのはツールでしかなくて、ゴミを拾った人がそこから新たな出発ができるようなプログラムで、ゴミ拾いをした時間と同じ時間グループディスカッションとかしているんですよ。ワークショップの終わりは、その人の始まりであってほしいと思うんです。
それはいい学びになりそうですね。最近、海洋ゴミをアクセサリーやお皿にクラフトする方とも仲良くさせてもらっているんです。ワークショップの延長線上でお土産的な感じで、そういった何か持って帰るものがあると深く考えてもらえるのかなと思っていて、うまくつなげられないかなと考えています。
そうなんですね。実は、コロナ禍で中止になったまま実施できていないんですけど、よくポストに入っている広告マグネットに拾ったマイクロプラスチック(5㎜以下の小さなプラスチックごみ)で作品を作ってもらおうというプログラムもあるんです。
面白そうですね。以前、菜央さんから「プラスチックは石油からできていて、地球から生まれたものだから悪いものじゃない」と聞いて「そうかー!」とハッとしたんです。使い方とか使う場所とか行く末が問題なだけだと。だから行動に移さなきゃいけないんだなと思ったんですよ。
覚えててくれたんですね!プラスチックって何からできてるって話だったんですよね。元になる石油が数億年前の生き物の死骸が長い年月をかけて地熱とかで変化したものだからっていう話ですよね。
プラスチックって問題が大きすぎて考えたことなくて、プラスチックって大変だな、くらいに思っていただけだったので、すごく感動したんですよ。還るべき場所が失われているんだよなと思って。還り方を私たち人間が導いてあげないと、プラスチック自身は自分では還れないので。そこをどうにかしたいなと。そうするにはいろんな人の協力が必要なので、まずは広めるようにしようと思っています。受け売りですけど、今では展示会とかで「プラスチックって地球から生まれていますから」って言っています(笑)こう言うとみなさん納得してくださるんですよ。プラスチックが悪いんじゃなくて、じゃあどうゆう方向に行ったらいいのかなって考えてくれるんです。
最後に、穂波さんからみなさんへメッセージをお願いします。
あらためて30周年おめでとうございます。長い歴史のある団体さんに関わらせていただけること本当に感謝しています。これほど長く続かれているのは、アイサーチを愛するみなさんのお力あってのことと思いますし、つながりが深くあるからこそだと感じます。ぜひ風呂敷も使い倒していただければと。旅行やちょっとしたお出かけにも使えるものだと思います。いろんなところで使っていただいて、「それどこで買ったの?」みたいなつながりやイルカ・クジラのファンが増えて、環境がプラスにいくお手伝いが少しでも出来れば幸いです。
同じ未来に向かってこれからもいっしょに楽しい活動できそうで楽しみです。代表の想いを改めて聞くこともでき、穂波さんの熱い想いもたくさん聞かせてもらえて、これからの活動の励みになりました。お二人ともありがとうございました!
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これまでの歩みを振り返ると共に活動に携わったたくさんの人たちの思いをたずねました。