【世界のイルカクジラニュース】予想外、ザトウクジラが胸びれを振り動かす
ザトウクジラの長い胸びれは、舵取りだけが役割じゃなかった!
ビデオタギング技術が捉えたのは、海のなかで鳥のようにはばたくザトウクジラでした。
近年、科学技術の進歩によりあらゆる方法で野生動物の行動を記録・観察できるようになりました。
GPS発信機を取り付けて野生動物の行動を記録するバイオロギングや、ドローンを用いた上空からの動画撮影による調査は耳にする機会も増えました。
そのひとつ、カメラを取り付けて動物の行動を撮影するビデオタギングという技術により、クジラの珍しい行動が明らかになりました。
クジラの中でも特に胸びれの長いザトウクジラ。
主に舵取りに使われる胸びれは、推進力にもなっていることがわかったそうです。
ザトウクジラが長距離を回遊できるわけはここにもあるのかもしれませんね。
予想外、ザトウクジラが胸びれを振り動かす
2017年7月10日付
スタンフォード大学ニュースより
スタンフォード大学で生物学の助教授を務めるJeremy Goldbogenと彼のチームが、ザトウクジラに装着した記録装置の映像を確認していると、クジラがペンギンやアシカのように胸びれを振り動かす場面をカメラがとらえていた。
研究者の一人によると、クジラは尾びれを使って推進力を得るが、前進するために胸びれを振り動かしている初めての例を記録したという。
鳥の羽ばたきに似ているそうだ。
ザトウクジラの胸びれは凹凸があり、細長い形状をしている。
非常に特徴的で、学名のMegaptera novaeangliaeは、「巨大な翼を持つニューイングランド人」という意味だ。
科学者たちはもともと、胸びれはかじ取りが主な役目だと考えていたので、泳ぎの名手ザトウクジラの胸びれが変わった形状をしていることに納得がいくという。
ビデオタギング技術は比較的新しく、最近になってようやく研究者たちはこの仮説を分析、展開してみる機会を得ることができた。
研究チームは、ザトウクジラがひれの動きで流体力を生んでいると考え、相当な推進力をつくりだしていることを発見した。
しかし、このような行動は極めて稀であることも判明している。
膨大な映像の中で、この動きはわずか2回しか確認できていない。
エネルギーを大量消費するため、一気に加速するためだけに使うのではないか、また胸びれの長さと動きの広範さから、ザトウクジラが唯一この動きができる種ではないかと考えていると説明した。
ザトウクジラは、クジラの中で一番研究されているクジラであるのに、学ぶべきことがまだまだたくさんあるということが示されたとGoldbogen氏は語った。
彼らの持つ最高の海洋技術をもってしても、クジラがあの巨体を迅速かつ正確に動かし、極めて効率的な長距離回遊をする能力に追い付けていない。
体の柔軟性やひれが、かじ取りにどう使われているかを理解することで、最大の生物が高効率な移動を可能にしている仕組みについて、もっと理解できるようになるとGoldbogen氏は述べている。
周りの環境を含めたクジラの体全体を捉えるタグの3-D動作と360度パノラマ式ビデオの開発が、研究グループの次のステップだそうだ。
元記事:http://news.stanford.edu/2017/07/10/humpback-whales-flap-foreflippers/
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